いつかいつかと思いながらなかなかチャンスに恵まれず、バスツアーを利用して行くしかないかと考えていた秋田駒ヶ岳ムーミン谷。チングルマの大群落を見てみたい。
国見温泉森山荘の建物の横が登山口だ。小雨交じりの空模様、晴れることを期待して7:30出発。樹林の中1時間程で横長根分岐に着く。ずいぶんと階段の多い道だ。右折して平らな道をしばらく歩き、樋状の道を抜けると第2展望台に到着。足元の藪の中に紅白のイチヤクソウが咲いていた。ここから先は展望が開けてくるはずなのだが、相変わらずどんよりとしていて稜線は隠れてしまっている。
黒い斜面が見えてくると谷への分岐に着く。直進すれば大焼砂を通り横岳経由男岳へ。左に折れるとムーミン谷から馬の背経由男岳へ。今回は谷から稜線に出るコースをとる。黒い火山礫の斜面をトラバースし、谷の入り口に向かう。遠目に見ると滑り落ちてしまいそうに見えた斜面にしっかり道がつけられている。ここで待望のコマクサを見つける。あったあった! よく目を凝らせば、黒い斜面にピンクの点々がいっぱい。一面に咲いているではないか! 皆、おもいおもいに撮影タイム。
ゆるゆる下って、ほんの少し登り返すといよいよムーミン谷の入り口だ。馬場の小路が本当の名前らしい。今まで全く見えなかった谷の様子が目に入ってくる。緑の中緩く下って行く一筋の木道が印象的だ。入口辺りのチングルマはほぼ終わりのようで穂先が風に揺れていた。愛らしい小さなヒナザクラやツガザクラ、イワカガミが咲いている。かたがり泉水を過ぎ、木道を下って行くと開放的な谷の全景が見えてくる。

まだ雪渓が残っている駒池の側から少し上るといよいよ谷の核心部。お目当てのチングルマの群落が絨毯のように広がっていた。周囲の日本離れしたような独特の景観と相まって素晴らしい。他では見られない風景にただ満足。遥々やって来た甲斐が有ったと言うもの。木道の脇で贅沢ランチにする。
ここから馬の背分岐に出るには、水蒸気の上がる女岳を左に見ながら谷の一番奥まで進み、そこから急な斜面に付けられた道を登ることになる。見上げるような急な道だ。昨年このコースを歩いた友人から「きついよー」と聞いて覚悟していたせいなのか、それともシラネアオイやエゾツツジやミヤマダイコンソウなど色とりどりの花々に気を取られたせいなのか、然程きついとも思わずに30分程で登りきることが出来た。見下ろすと、緑溢れるムーミン谷が火口原だと言うことがよくわかる。
馬の背分岐を左へ折れ、男岳頂上に向かう。この稜線もいろんな花々が溢れていた。
阿弥陀池に下るとここも辺りは花でいっぱい。さすが『花の山』と言われるだけあって、何処を歩いてもその名に恥じることなく、楽しませてくれる。
天気も青空が見えて回復の兆し。横岳から谷の入口までは大焼砂と呼ばれる砂走りのような道を真っ直ぐに下らなくてはならない。幅が広いので恐怖感はまったくないが一歩一歩がズリーズリーと滑り、歩きにくい。右手の斜面は又してもコマクサの群落。こんな大きな群落は初めて見る。愛らしいその姿に心和む。
谷への分岐に戻れば一周したことになり、後は登ってきた道を辿る。登山口直前でにわか雨に降られたりはしたが、3:00無事下山。
今夜は森山荘の貸ロッジを予約してある。宿の一番高台に有り、ちょっと狭いがテラスから周囲の森を見渡せ、気持ちが良い。ボロさ加減もちょうどいい。
荷物を移動した後、今回のもう一つの目的である釣りに出かける。温泉の建物の裏から、背の高い笹薮をくぐり抜けて河原に降りたったところに、良さそうなポイントが2つ。しつこいほど言われた通り、遠くから腰を屈めてそぉ~と近づき覗き込む。
あらっ! いるじゃん! 泳いでいるイワナが見える。ちょっと小ぶりではあるけれど。ここで焦ってはいけない。ゆっくりと竿を出し、鼻先に落としたつもりが素通りされ見えなくなってしまった。深さが合わないのか? 何度か流してみるが食いつかない。やっぱり見える魚を釣るのは難しいってことか。あきらめて下の大きいポイントに移動。隠れやすそうな岩もある、間違いなく居る。さぁ 出てこい!
内なる声に答えるように下流からスーと現れ、ブドウ虫の側を素通りした。やっぱり居たよ!しかもサイズは大部大きい。今度こそ逃すまい・・・
足元でバタバタ跳ねるイワナのお腹は鮮やかな黄色で、斑点もとてもきれいだった。サイズも今まで釣った中では一番大きい。フッフッフ。ひと雨降った後の夕方で条件が良かったね。出来ればもう1尾釣りたい。餌を変えようとして竿が折れているのに気付く。あーあ またか!
2番目と3番目のつなぎ目が割れてしまった。どこかにぶつけてしまったのか、記憶がない。慌てないように取り込んだつもりなのに・・。でも大きかったからもういいや、と未練もなく終了。数を釣らなくてもいい、1匹に一喜一憂する釣りでいいじゃないか、釣師になれるはずもないのだから・・・
夕食の時間も近くなり、全員で人数分釣れたところで終了とする。合計6尾。
さて、計測の時間。遠藤さんが釣り上げたイワナとほぼ同じ大きさ。水野さんのタバコの箱で計ると「2個半分だから25cmだな、箱はこの間計ったから間違なく10cm」との事。
そうかなぁ、もうちょっとあるように見えるけど。まぁ、自分に甘く他人に厳しいのは世の常、私だけではないはずだからね。仕方ない? でもメジャーできちんと計ったら絶対26cmはあると思う。そして、遠藤さんのイワナより私のイワナの方が若干大きい! ような気がする。
刺身とムニエルにしたイワナと宿の山菜料理を肴に楽しいひとときを過ごし、翌朝は「玄関から10分」の沢で男性陣は再び釣りを楽しみ、その間に女性陣は朝ビールと温泉を楽しみ、朝日を浴びながらのテラスでの朝食。と、ロッジライフを満喫したのでした。山良し、花良し、温泉良し、ロッジ良しと、とても1泊とは思えないような充実且つゆったりした気分で国見温泉を後にしたのでした。
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