平成23年 山行記録

I will be back! 谷川岳

 日 程  : 平成23年8月19日〜20日
 パーティ : 小山田


 

谷川連峰 白毛門〜蓬峠。
2年前に谷川岳馬蹄形縦走にチャレンジした、その続きです。山岳マラソンみたいな競技もあるのだし、どこまで行けるか挑戦してやろうと考えるとわくわくします。

8月19日(金)
 休暇をとり、14:30 香取市の自宅から出発。稲敷I.Cから圏央道・常磐道・北関東道・関越道とたどって、水上I.Cへ。この間、ずっと雨、特に北関東道あたりでは恐くて車速を80km/h に落としたほどの激しい降り方でした。関越道へ入ったあたりから雨は弱まり始め、土合橋わきの駐車場へ着いた頃にはほぼ上がった状態。翌日の天気にほのかな期待。
 19:00 少し前、まだ足元が見える明るさだったので、白毛門への登山口のあたりを確認。これは見ておいてよかった。翌朝は3:40 に歩きだし、ヘッドランプだけの視界では足元しか見えず、登り始めの沢を細い橋で越えるところなど、周囲の景色が頭に入っているほうが安心です。沢も雨で増水していました。
 白毛門への登路は14年前に小学生だった2人の子を連れて歩いています。周囲がまだ暗い今回は、その記憶に励まされました。改めて登ってみて、初心者泣かせの急登であることを実感。小学生は身が軽いのだなあと、自分たちのことなのに感動です。なつかしい。そのときは山頂でアキアカネの群れに包まれながらのお昼で、来た道を下山。1997年7月のことでした。

 さて20日(土)目覚めたら雨。「シトシト」というほどではないが、「ポツポツ」よりは、しっかり降っています。暗い中で身支度したので筆記具を車に忘れ、寝ていたままの着衣の上にカッパ。歩き出しは寒いぐらいでないと、あとが暑さでうるさいです。途中で長袖シャツを脱ぎ、6:30 白毛門山頂では汗で濡れ雑巾同然のTシャツを予備シャツに替え、生き返りました。
 悪天候だから、登山道はガスの中、とあきらめていたら、今回は高曇り。白毛門登路の上部では木の間越しに谷川連山のシルエットが意外に低い位置に見えました。こちらがいつのまにか高度を上げています。
 稜線に出てからはTシャツの上にカッパという服装。カッパは着ておいたほうがいいという程度の雨の降りかた。雲は高いままなので、近隣の山襞が見渡せ、東側の眺めなど、アニメ「もののけ姫」のオープニングの風景を見ているよう。概念図などでイメージしていたよりも、ずっとアップダウンがはっきりした稜線で、かなり体力を奪います。2年前のように快晴だったら、体力消耗度の予測が命がけになるところ。エスケープ路もない中途半端な地点で動けなくなったら大変。今回は用心して、水をペットボトルで4リットル背負っています。(雨模様のおかげで余りました。)
 雨模様の時こそ、単独行でよかったと逆に思うのです。登山もなかなか日程を選べないから、気象条件がよくないことも随分あります。雨の中を連れ立って登山する場合、連れはがっかりしながら歩いているのではないか、などと考え出すと気になり、必要以上にテンションを上げて登山を楽しんでいる自分を演出しなければならないような心境に追い込まれます。
 7:20 笠ヶ岳。8:30 朝日岳。朝日岳の奥の下りは、登山地図に書かれているとおり、だいぶ傷んでいます。歩くとどんどん路肩が崩れていく感じ。雨は相変わらずちらちら降っているけれど、魚沼盆地の田んぼも見えます。
 10:15 清水峠。大学生らしき5〜6人パーティが避難小屋前で休んでいます。そこで幕営するのか、小屋裏のスペースにテントを2張り設営し始めました。(まだ10時台なのに本日の行動終了?)。
 11:15 七ツ小屋山。地図にあるとおり、目印ポイント(ピークや小屋)ごとに約1時間ずつ要します。12:10 蓬峠。七ツ小屋山から蓬峠にかけて、笹が密生して登山道にフタをしてしまっています。わざと刈らずに放っておいて、未熟な登山者の根性を鍛えるのかな。足元が見えないというのは、恐怖心との闘いです。スピードダウン。
 14:50 土樽駅。蓬峠から茂倉岳まで行けるならば、その先はなんとでもなる気がするが、そこまでにかかる3時間が作れません。「もう充分」と心のどこかに声がします。そこで即席プラン。土樽側へ下山してみることに。土合へ向かう東側エスケープ道は2年前歩いて飽きたので。もちろん計画段階で、蓬峠で判断するつもりでした。エスケープルートがどこも長く感じるのは、気持が萎えてしまった後だから、という心理学かな。
 清水峠から土樽駅まで、これまた誰とも出会わない世界。土曜日なのに、陰気な天気のせいで人が来ないのか。新しい靴跡もあるのだけど、生身の人間には、土樽駅まで会いませんでした。下山の蓬新道は、湿った樹林の中ばかり。けれども途中、視界すべてブナの大木の斜面があり、乾いた日で時間があるならば、ゆっくりしたい道でした。

 今回の山歩きで限界が見えました。年齢による限界ともいえますが、土樽駅に着いたとき、力をしっかり使いきったという充実感がありました。11時間も歩いてしまった。濡れたゴロ岩に何度も足をとられました。(それでも帰る体力は不思議と残っているのです。)
 それにしても、清水峠以外ではだれとも出会いません。白毛門から朝日岳にかけてのデコボコ稜線はきついが、だれにも気兼ねなく歩けたのはいい経験。人間に全く愛想を見せてくれない自然界との張り詰めた関係が、山歩きの味わいのひとつでもあります。誰に自慢しようとか、誰かを連れて来たいとか、余計なことを考えずに純粋に山の緊張感と向き合えるのは、それはそれで意味あることだろうと思います。

空にふれ 山にいだかれ 国ざかい