平成23年 山行記録

奥秩父全山縦走

 日 程  : 平成23年8月11日〜17日
 パーティ : 岩尾、他4名


 

8月11日 晴れ
3名はAの車で瑞牆山荘へ、岩尾と1名はあずさ3号で韮崎からバスで現地入りし、合流した。
出発が遅く、夕餉が5:30、よって5:00までにお帰りを、と釘をさされ、Aを入れ6人のロートルがこれから瑞牆山へいけるの?みたいな顔をされ、11:00出発。林のなか、次第に高度を上げ、里宮神社の標識あたりから傾斜が強まり、尾根にでると、前方に瑞牆山の切り立つ岩峰が木々の間からを覗き見える。尾根を緩やかに行くと、水場があり水を補給し、その上が富士見平で小屋がある。大日小屋への道から左に分かれ、山腹を巻いて天鳥川へ急下降する。川を渡り左に大きな桃太郎岩を見て、すぐに木の階段を登る。横幅がとても広く立派ではあるが、ここでは幅は半分以下でよさそうであり、浮いた分で他の箇所に利用できそうである。徐々に傾斜を増し、花崗岩の大石の間を抜けるように登る。頭上の大きな岩峰、ヤスリ岩の基部に着く。右手を巻くようにルートがあり、右の岩峰の間を登り右に回りこんで頂上である。
金峰山、小川山などが望まれる。夕食が気になるので早々に頂上を後にする。標高差700mの下りは、なかなかのものがあり、それでも食事に間に合った。
Aは食事後、帰京した。
* 瑞牆とは神社の周囲の垣根をさし、金峰山を主とし、その瑞牆山はその瑞牆との言われがある。

 8月12日 晴れ
今日から縦走が始まる。金峰山でBが待っているはず。映像担当のVTRが回るなかを出発する。途中左手の里宮神社に寄る。大岩のひさしの下にあった。富士見平から飯森山の山腹を巻くように尾根にでて、緩やかに高度を上げ、鷹見岩の分岐あたりから下っていって、大日小屋に出る。小屋は右手下にある。ここから大日岩の急登が始まる。基部を巻くようにのぼりつめると、尾根に出る。目の前に大日岩が見え、そこを進むと小川山へ至る。右に進んで樹林の中を行き、傾斜が増し砂払ノ頭に上がる。眺めが良いところである。ここから岩尾根になり右手、山梨側は切り立って緊張するところもある。ぐんぐん高度をあげ、金峰山小屋への道を左に分け、なおも進むと五丈石の基部に至る。山頂からBが降りてきて無事合流。冷えたビールの差し入れには天にも昇る心地よさ。大休止後山頂に登る。あとは下るだけと気が緩んだのか、時がたつのが長く感じられ、やっとのおもいで大弛峠についた。Bもここで泊まるので、皆で冷えたビールとボトルワインで乾杯、乾杯。

 8月13日 晴れ
せっかく来たのだからと夢の庭園を行く。環境を配慮し、木の階段が続く。前国師から奥秩父最高峰の北奥千丈岳2601mを右に分け、なおも進むと国師ヶ岳に着く。ここで集合写真を撮り、Bは往路を下山する。北奥千丈岳を登って帰るので、縦走隊員でもあり縦走したことにする。ここから長大な尾根が甲武信岳まで続く。出だしは道が細く笹薮がうるさい中を、天狗尾根の分岐にでる。左に折れ国師ノタルまで下って行く。倒木が多く歩きにくいし、幅広の尾根で迷いやすいので、赤テープを見ながら歩く。似たようなところが多く、現在地が判明しない。最低鞍部の国師ノタルに着く。木の根元に古い標識が置いてあるのみである。ここから登りにかかり、東梓に上がる。ここから両門ノ頭まで60分程は長かった。ここのコースタイム30分では無理だよ、と皆の声。ここは山梨側に岩壁があり、眺めがよい。ここまでくればもう甲武信岳の領域であろう。富士見をへて水師(ミズシ)をすぎ、千曲川からの道を合わせ、ガラガラの急登を頑張ると本日の目標、甲武信岳である。
甲斐、武蔵、信濃の国境にあり、笛吹川、荒川、千曲川の源流でもある。国師〜甲武信岳間は標識が整備されておらず、十分なルートファインデングが必要である。長い1日の仕上げに、小屋へ下る。乾杯のビールも缶のお持ち帰りでは、気勢が上がらず、誰も晩酌を言うものもなく、寂しい食事であった。

 8月14日 晴れ
今日はコースタイムで一番長い行程である。時間を稼ぐ為、巻き道を行く。尾根に出、下っていくとなだらかな鞍部になり破風山避難小屋がある。新しい立派なもので、内部も広い。水場は20分とある。ここから急登になり、岩まじりのルートが続き西破風山に飛び出す。この辺は破不山とも表記してあり、同行の建築の専門家は、破風が正しいという。岩がごろごろしたところを歩き、東破風山を過ぎ下降し登り返し雁坂嶺にでる。ずんずん下り、雁坂峠である。この下を秩父から山梨に抜ける雁坂トンネルがある。昔は往来が多く、針の木峠、三伏峠と合わせ日本の3大峠という。
ここから南下し水晶山に向かうが道が細くなり、笹を掻き分けての道行きである。左から雁坂小屋からの道を合わせるが、人跡の様子がなく草も深い。水晶山から古礼山へ尾根道をいく。山頂から草原状のところを行き、左から巻き道を合わせ、燕山(ツバクラヤマ)に着いた。もう一息である。下って行くと、眼下に明るい草原が見えてきた。木々の少ない斜面をジクザクに下っていくと雁(ガン)峠(トウゲ)である。牧歌的な草原で、気持ちもなにかほころんでくる。目の前に明日の笠取山が、でかく見える。少し行くと左手に雁峠山荘があり今は使われていないが、登山ブームのころの勢いを想わせる。少し登り草原を下ると、林道に出、そこをのんびり行くと、笠取小屋は至近である。一之瀬高原も近く、人里の匂いがする。小屋から日本酒の差し入れもあり、ここで前半が片付いたので乾杯を執り行う。

 8月15日 晴れ
連日の行動で疲労もあるのでは、とのことで今日は将監峠までの計画である。しかし山腹道では面白くなく、尾根道を選ぶ。昨日の道を戻り、源流コースを登る。笠取の斜面を直登し西笠取山、少しはなれて東笠取山1953m岩の間を縫うように進む。下っていくと水干からの道を合わせ、唐松尾山に向う。近付くにつれ登りがきつく、山頂である。下りは山の斜面をどんどん下り、巻き道と合わさる山ノ神土である。ここから和名倉山への標識がある。少し行くと某大wvの慰霊碑がある。将監峠から標識に従って山道に入るが、小屋が左下に見え、離れて行く。引き返し標識を確認したところ、わずか右手にずれたところによく踏まれた山道があり、そちらに誘引されたのである。標識は再考するべきであろう。小屋は大きな切り開きを、真っ直ぐ下るとあった。
夕食時、主人の田辺金雄氏が、慰霊碑についての内容をぼちぼちと話してくれた。昭和49年、某大wvの新人が容態急変で、要請をうけ最初に駆けつけたのが、田辺金雄氏である。現場に着いた時は人工呼吸中であったが、すでに心肺停止状態であったそうである。氏によればシゴキによる疲労死亡で、18歳の前途ある命を散らしたのである。他の某大での例では、シゴキに耐えられない新人が脱走を図り氏に救助を求め、柳沢峠までバイク、そこで知り合いの材木運搬トラックにたのんで塩山まで、ところがそこにも追ってがいて、他の駅にタクシーで逃がしたそうである。なんとも痛ましい情景ではあるが、この当時このような記事が新聞をにぎわしたことを諸兄、記憶にあるだろうか。

 8月16日 晴れ
将監小屋から切り開きを行き、徐々に高度を上げ、峠からの道と合わさると、ほぼ水平道になる。ずーと歩いて大ダル、飛龍山を巻いて禿岩の標識、禿岩は右手数分の所にあり眺望がよい。少し行くと飛龍権現で、飛龍山までの標識、パスし先へ進む。北天ノタルは三條の湯への分岐、狼平の広場を見て、三条ダルミに着く。最後の登りは結構しんどく、雲取に登りつめた。ここは皆さんお馴染みで我が家に来た様子。マルバダケブキが群生し、黄色の花にアサギマダラが群れていた。大休止後、雲取山荘へ下る。旧来と変って大きく立派な2階建てで、中にはいると、部屋が沢山あり快適である。携帯が通じいろいろ連絡をとる。食事もおいしく頂けた。

 8月17日 晴れ
今日は最終日、今日中に帰らなければならぬ人がいて、早々に出発する。雲取ヒュッテの脇を通り大ダワに降り立つ。ここから右に大ダワ林道がわかれ、日原へいける。直進し右に長沢背稜への道を分け、山腹をからんで芋ノ木ドッケで尾根にでる。白岩山で一本立てる。鹿がよく見られる所であるが、今はいないようだ。熊よけの鈴で警戒してるのかなー?という輩もいる。下ると無人の白岩小屋で、西側の展望台から和名倉山が正面にみえる。ここから徐々に下って行き、急降下してお清平に降り立つ。終盤である、がんばって霧藻ヶ峰で、休憩所がある。その先に秩父宮後夫妻のリレーフがある。緩やかな尾根をリラックスしのんびり歩き。炭焼き跡をすぎ奥宮への道を右にみて、七日目にして三峰神社に辿り着いた。神社にお参りした。その昔、日本武尊が東征の際この地で案内をしたのが、山犬(狼)ということで神社の狛犬が狼であり、いまでも狼を探訪しているグループが存在していると聞いている。Aと無事再会し安堵した。1名はバスで帰京、それ以外は汗を流し、完全縦走を祝うため、Aの車で国民宿舎両神山荘に向った。もちろん大宴会でなかろうはずはない。

今回奥秩父を旅したのであるが、近年この山塊(秩父多摩甲斐国立公園)を、東アルプスと呼ぼうとするポスターが山小屋などに見られる。小屋の組合などの地域興しのキャンペーンである。
樹木の中を逍遥するこの山並みは、やはり奥秩父がふさわしいとは思う。百名山である瑞牆山、金峰山、甲武信岳、雲取山周辺は、にぎわってはいるが、それ以外は、静かな山旅が味わえる。樹木のなかの道々は、夏の光線を適度に和らげ、快適であった。分水嶺トレイルが行われていて、鴨沢―雲取―大弛峠―金峰山―清里がゴールである。夜を徹して走りぬける先頭パーティーなど数パーティーと行き会ったが、後半の連中はリタイヤ組が多かったようである。

コースタイム
8月11日
  瑞牆山荘11:00−富士見平小屋11:50〜12:10−天鳥川12:40−瑞牆山14:05〜20−天鳥川15:30〜35
  −瑞牆山荘16:55
 8月12日
   瑞牆山荘6:45−里宮神社7:20−富士見平水場7:40〜50−
   大日小屋8:55〜9:10−大日岩9:45〜10:00−砂払ノ頭11:20−五丈岩12:20
   Bと合流12:50−金峰山13:00− 大弛峠(小屋)16:00
 8月13日
   大弛峠6:00−前国師6:50−国師ヶ岳7:15−国師ノタル9:35−東梓10:30〜50−両門ノ頭11:50−
   富士見12:35−水師(ミズシ)13:30−千曲川源流分岐13:45−甲武信岳14:15〜25−甲武信小屋14:45
 8月14日
   甲武信小屋5:30−木賊山分岐5:50−破風山避難小屋6:50−西破風山7:35〜40−東破風山8:25−
   雁坂嶺9:30〜45−雁坂峠10:20〜30−水晶山11:15〜30−古礼山12:00−燕山(ツバクラヤマ)13:10
   ―雁(ガン)峠(トウゲ)13:35〜50−笠取小屋14:20
 8月15日
   笠取小屋7:00−西笠取山7:50〜55−東笠取山(1953m)8:05−唐松尾山11:05−山ノ神土12:05〜20
   −将監峠12:50〜13:00−将監小屋13:20
 8月16日
   将監小屋5:30−大ダル7:50−禿岩8:30−飛龍山分岐(飛竜権現)8:45―
   北天ノタル9:35〜50−三条ダルミ12:15〜25−雲取山13:05〜35−雲取山荘14:20
 8月17日
   雲取山荘5:40−芋ノ木ドッケ7:00−白岩山7:10〜15−白岩小屋7:40〜50−お清平9:15−
   霧藻ヶ峰9:35〜50−三峰神社12:00