平成23年 山行記録

伊吹山

 日 程  : 平成23年7月24日〜26日
 パーティ : 高橋(恵)、他1名 


 

色鮮やかなピンクに染まる山頂周辺の「お花畑」の写真を目にしてから、いつかは行かねばと思い続けていた花の山「伊吹山」。
最近の登山ブームのせいもあってか、ツァーを企画する旅行会社は多い。「お花畑」で人気の伊吹山ツァーも、どの会社でも扱っている。1泊コースだと中央アルプスや木曾方面にも足を運ぶ事ができ、料金も安く手軽だ。が、希望の日程はすでに満席でキャンセル待ちとの事。仕方ない、夜行バスと新幹線を使って自由気ままな個人ツァーで行って来よう!

 夜行バスはほぼ満席状態で皇居前のBTを11時15分に出ると、東海道本線「草津駅」前に朝5半過ぎに着いた。田舎の駅かと思っていたが、結構都会でちょっとびっくり。ここから東海道本線に乗って長岡駅まで移動。駅から10分位で登山口に着くので、便がいいなと思ってやってき来たが、夏山シーズン真只中だというのに他の客は無く、駅舎も駅前も閑散としていた。何とも心細い。期待していた早朝の臨時バスは無く、始発バスまで2時間以上もある。出だしからつまづく。結局、1台しかないタクシー(この時間には)で上野の登山口まで入る。予約のお客さんが有るとかで登山口のバス停脇で降ろされてしまったが、ゴンドラの山頂駅まで入ることもできたようだ。

 伊吹山のバスツァーは、関ヶ原側から伊吹山ドライブウェイで9合目まで入り頂上周辺の「お花畑」だけ散策する良いとこ取り。せっかくの個人ツァーだ、ゴンドラを使って3合目まで入れば、コースタイムも余裕があるし、1日山を楽しもう! と上野の登山コースを選んだのに、来てみればゴンドラは運休。あっちゃ〜!  
私たちの足ではどう計算しても夕方4〜5時にはなってしまう。それから長浜のホテルまで移動しなくてはならない。頂上までいけるだろうか? だけど今さら関が原側へまわる訳にもいかないし、ここまで来て登らずに帰る訳にもいかない。ぐずぐず
考えている内に、後から来た2人連れのお兄ちゃんたちが出発していった。手荷物を預けた土産物店のおばちゃんも「みんな行ってるよ!」、と軽く言う。ほんとに大丈夫かなぁ〜、と不安な思いのまま歩き始める。

 薄暗く湿っぽい樹林の道を30分ほど歩くと伊吹山スキー場の一角に出る。ここが1合目。眺めが良く、風が気持ちいい。ゲレンデの中の道は楽そうにみえて、結構きつい。後頭部をじりじり照らされ暑い、暑い! 下の方に団体さんの姿が見える。若者は歩くのが早く、元気に追い越していく。地元の人なのか身軽な格好で歩いている。
3合目はゴンドラの山頂駅が有る。伊吹山を見渡せる広々とした草原で、きれいなトイレも有り絶好の休憩ポイントになっている。ここにはやわらかな黄色のワタスゲが自生していて、近く観賞会があるらしい。その頃にはゴンドラも運行されるのだろう。

 上野コースはほぼ1時間おきにトイレや小屋があり、目安になる。5合目の売店小屋ではおじいさんが1人で店番。残り少なくなり不安だった飲み物を買って一安心。冷たいジュースを飲んで生き返る。この小屋の裏手からいよいよ本格的な上りになる。砂利道状だった道も登山道に変わる。スイスの山岳写真に出てくるような石造りの避難小屋を過ぎると9合目辺りまでつづら折りだ。灌木や高山植物に覆われた緑の大きな壁がおおいかぶさってくるようで中々迫力がある。頂上はガスの中だ。頭上には遮るような樹木は無いので登っていく人影がよく見える。それがつらいと言えばつらい。たどりつけるだろうか?

 「頂上までは無理なので、ここから下る。下で待ってるから一人で行ってきて!」と友人が言う。一人残すのも気が引けるが、下るにはまだ時間が早いし、ここで下るのは消化不良。ピストンコースでもあるので行かせてもらうことにする。歩き出してみれば、道幅は広く注意していれば踏み外してしまうようなことはなく、ゆっくり登って行けば問題はない、体力勝負。急勾配ではあってもジグザグに上っていくので標高を稼げ、アップダウンが無いのでむしろ精神的には楽だ。フウロやメタカラコウを慰めにひたすら上る。振り向けば、続々と人が上がってくるのが見下ろせ、夏山らしくなってきた。
どんどん追い越されながらもなんとか9合目に到着。この先、道はほぼ平らになり身も心も軽くなる。あとはお花畑を堪能するのみ。楽しみ、楽しみ!

 伊吹山は高山植物の宝庫、1300種類もの植物が在ると言う。イブキトラノオ、イブキアザミ、イブキジャコウソウなどイブキと名のつく植物も20種類くらいあり群落そのものが天然記念物に指定されているとか。
しかし、その花々が咲いていない。真ピンクに咲いているはずの「お花畑」はまだ緑の蕾のままだ。多少、遅くても早くてもこの時期ならまず大丈夫だろう、咲いていないなんてことは考えていなかった。ピンクのジュータンの中を散歩、の願いは敢え無く消えてしまった。ガスの中、目を凝らしてもアザミやシモツケソウの蕾が色づいている程度の寂しい「お花畑」を進んで頂上へ。

 日本武尊の碑が建つ山頂は、予想に反して売店が5軒もある賑やかな場所だった。名物なのかソフトクリームの看板がどの店にも掲げてある。風情に欠けると言えば欠ける。この売店の奥にお花畑が広がっているらしい。残念ながらまったく展望はきかず、時折すぐ下のドライブウェイの大駐車場が見える程度。展望と花畑は諦めかき氷で休憩。この「かき氷」の意外な美味しさに、まあ〜いいかぁと言う気持ちになる。
 小1時間程待ったがガスは晴れそうもなく、下山にかかる。周遊コースの一部を回ってみたが、場所によってクガイソウやシモツケソウが咲きだしたくらいでもう2〜3週間位はかかりそうな気配だった。ゴンドラ広場で友人と無事合流し、スキー場まで下ると雨が降り出した。時雨だ。閉店時間ギリギリで手荷物を受け取り身支度をしている内にバスは発車してしまい、またもやタクシーの世話になる。

 写真で見たビッシリとジュータンを敷き詰めたようなお花畑の印象が強く、その中を歩くことだけを思い描いていたのに、残念ながらその想いは果たせなかった。が、いろんな種類の可愛らしい清楚な高山植物はたくさん咲いていて、久しぶりに夏山気分を味わえた山行でした。よく整備された観光地の遊歩道のようだった駐車場からの道を歩いただけだったら、きっと物足りない味気ないものに終わったにちがいない。