タキタロー伝説が語り継がれている大鳥池から花の以東岳へ・・・・。
今までにも行く機会はあったが一度目は風邪をひき、二度目は前線を避けるため予定変更、三度目でやっと行けることになった。
8月1日
泡滝ダムの駐車場 (8:40) は,すでにかなりの車が並んでいた。 3人で6人用のテントと2泊分の食料で遠藤さん、水野さんは大荷物である。
登山道は大鳥川の清流を右手に見下ろしながらの、ほとんど傾斜のない幅広の歩きいい道である。雨の予報であったが大したこともなくブナ林の中を快調に歩く。冷水沢の吊り橋を渡り、さらに七つ滝の吊り橋を対岸へ渡ると、いよいよつづら折りの急登になる。先頭の遠藤さんがゆっくり歩いてくれるので、それほどきつく感じない。それに所々にひしゃく付の水場があり喉をうるおしてくれる。
つづら折りの急登が終わり平坦なブナ林を少し進むと、周囲の森を映した大鳥池の湖面が樹々の間から見え隠れするようになる。 「やっと来た!」 ワクワクして自然に足が速くなってしまう。と、間もなく池を正面にのぞむ大鳥小屋(タキタロウ山荘)に着いた(12:50)。
森に囲まれたキャンプ場は広々していてまだ1張りのテントもなく、一番よさそうな場所へテント設営。
ひと休みした後、水野さん、遠藤さんはさっそく沢靴に履き替え釣り支度をし、私はサンダルに釣り竿だけ持って、2人の後をテント場の下の川へ下りる。
餌をつけてもらい教えてもらったように釣り糸を垂らしてみる。 5分も経たないうちに竿を持つ手にぐぐっとくる感触が・・・。慌てて振り回すように竿を上げると、先についているものがある。なんと釣れてしまった! イワナ?ニジマス? まさか本当に釣れるとは・・・驚いた!
水野さんと遠藤さんがとても喜んでくれて、だんだん嬉しさがこみ上げてくる。
その後もポツポツ釣れて、最後の1匹は粘って釣り上げ計5匹。小型だが初めてにしては大漁である。
川を下っていった2人は食事の支度をするころには、私が釣ったものとは大違いの大きさのイワナを釣ってきてくれた。ベンチや石でセットした“食事処”で唐揚げにしたイワナ等で飲んで食べて、いつものように楽しい時間を過ごす。
初めて自分で釣ったイワナは、何か特別な味がしました。
明日の以東岳への登りに備えて早めに就寝。6人用のテントに3人でのびのびと。
8月2日
今日は以東岳をピストン。お天気もまずまずの様子。直登コースは下山にして、登りはオツボ峰コースを行く。
大鳥池畔からは、オツボ峰コースも樹林帯の急登だ。三角峰の手前で樹林帯を抜けると以東岳ののびやかな山容が視界に広がってくる。楽しみにしていた花もちらほら見え始め、季節としては終わっているはずの「ヒメサユリ」を見つける。ピンク色で少しうつむきかげんに咲く花は、この名前とぴったりの気がする。「こんなにまじかに見たのは初めて」と言う水野さんも大喜び。ここからは広い尾根の稜線漫歩だ。
オツボ峰辺りでは、群落をつくって咲く「マツムシソウ」に目を見張る。強い風が吹く中、ゆらゆらゆれる紫色の「マツムシソウ」は何ともいえず素敵だった。
「ニッコウキスゲ」も「チングルマ」の白い花も群落で咲き、「ヨツバシオガマ」や「フウロ」等など。湿原ぽい所に咲いていた黄色の線香花火のような花の名前を水野さんに訊かれて、どうしても思い出せない。いろいろな花の名前を頭の中で並べてみるが、さっぱり浮かばない。それでも久しぶりに一眼レフで写真を撮り、花の夏山を満喫する。
小さなアップダウンをいくつか越え、以東岳の頂上に到着。霞んではいるが周りの山々も見渡せ、眼下の大鳥池は見事に熊の皮を広げたようだ。
直下の以東小屋に着いた時、突然「キンコウカ」の名前を思い出した。そうだ、さっきの線香花火のような花は「キンコウカ」だ。確かめるように小屋の管理をしているお姉さんに訊くと間違いなく「キンコウカ」。水野さんは「山にいるとき思い出してよかったね」と。(やれやれ、こういうこと、だんだん多くなるのかなぁ。)
風が強いので小屋の中を借りて、暖かいコーヒーでひと休みする。小屋の前で3人揃って記念撮影をし、そのお姉さんが「私のデザート」という小屋の前で真っ赤に熟れていた「ノウビイチゴ」を、少しだけご馳走になって、いよいよ下山。
「キンコウカ」のゆれる草原を過ぎ、所々深くえぐられたような登山道を通り、樹林帯を急下降する。大鳥池に向かってまっすぐ下っていくような感じで、少しびびっていたが木につかまったり、笹をつかんだりしながらも、思ったより簡単に、東沢出合の河原に下り立ちホッとする。あとは池の畔をのんびりと半周ほどしてキャンプ場に戻ればいいのだから。と思ったが、ところがそうはいかなかった。細い道はアップダウンあり、うっかり足を滑らせたら池にドボンと落ちそうで、今日一番の緊張した道だった。
PM2:00 テント場に着き、夕方まで思い思いの時間を過ごすことにする。
釣りに、今いちばんのっている遠藤さんは休憩もそこそこに、さっさと支度をして出掛け、水野さんも昼寝をしている間に出掛けたようだ。 広いテントを独り占めにしてトロトロ眠り、グダグダする。山でのなんともいえない“とき”です。
小屋の方からは時々賑やかな声が聞こえるが、テント場の方はまったく静かで昨日は5張りほどあったテントも、今日は私達のほかに1張りだけ。そういえば以東岳も、出会った人は数人しかなく、静かな山だった。
今夜の食卓も、釣り師2人が釣ってきた大きいイワナの塩焼きが並び、贅沢な晩餐である。
食事の後、水場で歯を磨いているとテントの方から「内田さん、早く、早く!」
急いで行ってみると「ほら、見て!」。 林の中、テントのそばにも光るものが見える。
ホタルだ、ホタルの光だ。あちこち飛びかう光に3人で大はしゃぎ。取水口の方に行ってみると案の定、水辺はもっとすごい。真っ暗な中、光が輝いている。 小さい光の群れがくっついたり、離れたり、幻想的な風景だ。
シュラフに入って山で見た花やホタルのことなど、思い浮かべながら心地よい眠りにつく。
8月3日
さわやかな朝を迎える。朝の光が木々の葉を通し、その間から静かに水を湛える大鳥池を見ながら、ブナの樹林帯を泡滝ダムへと下る。
念願の大鳥池―以東岳は期待どおりというよりそれ以上だった。また行きたいと思う。
同行してくれた水野さん、遠藤さんに感謝します。
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